「カタン、カタン…」夜中、ふと聞こえる物音にハッと目が覚める。愛する老犬が、また目的もなく部屋をぐるぐると歩き回っている…。
家具にぶつかったり、転んで怪我をしたりしないか、気が気じゃなくて、なかなかゆっくり休めない。そんな不安な夜を、あなたは何度も経験していませんか?
認知症などが進むと見られる老犬の徘徊(旋回運動や目的のない歩行)は、愛犬の安全はもちろん、飼い主さんの心にも大きな負担をかけます。
もしかしたら、「このままで大丈夫だろうか」「私にできることはもうないのかな」と、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、どうか一人で抱え込まないでください。あなたのその優しい気持ちに応えるため、今回はビニールプールを徘徊対策に活用する方法をご紹介します。
実際に利用している飼い主さんの声や専門家の知見も交えながら、愛犬とあなたが少しでも安心して過ごせるためのヒントをお届けします。
なぜビニールプールが老犬の徘徊対策に最適なの?
「ビニールプール?」と、最初は意外に思うかもしれませんね。
でも、実はこのアイデア、徘徊する老犬の安全を守り、あなたの心配を和らげるための、たくさんのメリットがあるんです。
衝撃を吸収!老犬に優しい安心安全な素材で怪我の心配を減らす
一般的な金属製や木製のサークルは硬く、もし徘徊中に愛犬がぶつかってしまったら…と考えると、胸が締め付けられる思いがしますよね。
でも、ビニールプールの柔らかく弾力性のある素材なら、万が一愛犬が壁にぶつかってしまっても、その衝撃を優しく吸収してくれます。
体への負担や、痛ましい怪我のリスクを大幅に減らせるんです。
特に、方向感覚が不安定で物にぶつかりやすい老犬にとっては、この「柔らかさ」がどれほど大きな安心材料になるか、想像に難くないでしょう。
また、プール底面も柔らかいので、疲れて座り込んだり、不意に転倒してしまったりした際も、大切な関節への負担を和らげるクッション代わりになってくれます。
手軽に設置!介護の負担を減らして「ホッと一息」を増やす
老犬の介護は、時間も費用もかかるもの。特注の介護用品や大がかりなリフォームは、なかなか簡単に手が出せませんよね。
その点、ビニールプールはホームセンターやオンラインストアで比較的安価に購入でき、気軽に試せるのが魅力です。
設置もとっても簡単。空気をシュッと入れるだけで、あっという間に愛犬のための安全なスペースが完成します。
使わない時期には空気を抜いてコンパクトに収納できるので、お部屋の場所を取る心配もありません。
そして、何より飼い主さんにとって嬉しいのは、ビニール素材が水を弾くため、もし排泄の失敗などで汚れてしまっても、サッと拭き取るだけで清潔を保てること。
日々の介護で忙しいあなたにとって、これはきっと大きな助けになるはずです。少しでも介護の負担が減れば、あなた自身の「ホッと一息」の時間も増やせますよね。
見守りもラクラク、だから安心
ビニールプールの多くは、高さ30㎝前後。高すぎて愛犬に圧迫感を与えることも少なく、愛犬からプールの外にいる飼い主さんを見ることができます。
外からも中の様子がしっかり見えるため、異変があった際にもすぐに気づいてあげられます。
特に側面が透明なクリアタイプのプールを選べば、愛犬の様子が一目で分かりやすく、ペットカメラでの見守りもしやすくなるでしょう。
あなたが家事などで一時的に目を離す必要がある時でも、「うちの子は今、安全な場所にいる」という安心感は、何物にも代えがたいものです。
実際にビニールプールを使用している例
Xに投稿されていた、実際にビニールプールの中でぐるぐる回って歩く老犬さんたちです。
あなたの愛犬にピッタリのサイズを見つけるヒントになるのではないか、と思います。
ポンちゃんのグル活のために
— ポンママ (@whitepon0119) March 8, 2024
ビニールプール買いました😆 pic.twitter.com/TpFRb8wfhc
時々よろよろっとビニールプールの壁にぶつかってますが、柔らかいのでケガの心配なく見ていられます。
最後、ぽてっと転んでしまうのもまたカワイイですね!
次に、こちらはサイズ選びに失敗したかも?という内容の投稿です。
2月22日
— ( ✧Д✧) カッ (@1AmGbFkXPZLFPkI) December 17, 2020
介護生活の中で
伝説的失敗。
先輩ママさんの
ビニールプールを使っての
グル活アイランド⬇️https://t.co/0y7nCR0vRU
に憧れてチャレンジするも、
圧倒的なサイズミスで撃沈…💧
困惑気味なモモ🤣
⬇️続きます#秘密結社老犬倶楽部#介護を振り返って17 pic.twitter.com/EBj7PQb1l0
モモちゃんにはちょっと小さかったのかな?初めてのビニールプールに戸惑っている様子です。底に人工芝を貼っているみたいですね。
また、お部屋のスペースが許すなら、大きいビニールプールを使って工夫しているこちらの投稿が参考になるかもしれません。
ゆずるくんが教えてくれたなの🌈ほのり🐈#秘密結社老犬倶楽部天国支部 pic.twitter.com/ZvRpKFFFat
— 赤柴ほのり🌈 赤柴さくら🌸 (@einbello) December 13, 2023
プールの真ん中に筒状の柔らかいものを置き、それに沿って歩くがお気に入り、という老犬さんもたくさんいるみたいです!
【実践編】失敗しない!愛する老犬のためのビニールプール選びとポイント
では、実際に愛する老犬のために、徘徊対策としてビニールプールを選ぶ際の具体的なポイントを見ていきましょう。
【ビニールプールの大きさで選ぶ】愛犬にぴったりのサイズとは?
愛犬が快適に過ごせる広さを確保することは、何よりも重要です。
ただ寝る場所としてではなく、徘徊行動を安全に続けることができる、十分なスペースを確保してあげましょう。
ストレスなく動き回れるスペースの確保
徘徊する老犬は、同じ場所をぐるぐる回ったり、後ずさりができずひたすら前進しようとします。
そのため、体が壁にぶつからずに、ある程度の距離を歩き続けられる空間が必要です。
また、一口に「同じ場所をぐるぐる回る」と言っても、狭い範囲をくるくる回る子もいれば、大回りをして大きな円を描くように歩く子もいます。
愛犬のパターンを見て、ビニールプールの大きさを考えてあげるとよいでしょう。
徘徊行動の特性と安全性の確保
ビニールプールを使うことは、徘徊を完全に止めるのではなく、安全な環境で続けられるようにすることが目的です。
ぶつかっても衝撃が少ないビニールプールの特性を活かしつつ、ある程度の移動スペースを確保します。
愛犬の体重別ビニールプールのサイズの目安
次に書く体重別推奨サイズは、環境省が定める動物取扱業における飼養管理基準や、動物介護の経験がある方々の声を総合的に考慮したものです。
● 犬:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)
犬猫のケージ等については、自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、方向転換する、身繕いする等の日常的な動作が容易に行えるような大きさを具体化している。
犬が方向転換を含めて自然な動作を行うために必要な平面スペースが、タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)です。
愛犬がぐるぐる回るように歩けるサイズは、この基準より更に大きいことが必要になりますね。
大きすぎると日本の住宅事情では設置が困難になるため、ある程度の広さを確保しつつも、室内で収まる現実的なサイズ感を提示しています。
【体重別推奨サイズ目安】
【体重以外のサイズ選びの基準】
【壁の高さで選ぶ】事故防止のために必要な高さは?
また、高さについて考えることも必要ですね。
市販されているビニールプールの壁の高さは20㎝~50㎝程度。大きなプールほど壁が高くなる傾向があります。
犬の体重別ビニールプールの壁面の高さの目安
ビニールプールの壁面の高さは、愛犬が乗り越えて脱走したり、転落したりするのを防ぐために非常に重要です。
しかし、高すぎると圧迫感を与えたり、飼い主さんが愛犬のケアをする際に不便になったりすることもあります。
一般的には、「犬が鼻先を壁面に置いたときに、頭が完全に乗り越えられない程度」、または「犬が後ろ足で立ったときに、前足が壁面から出ない程度」が目安とされます。
老犬は若い犬ほどジャンプ力がないことが多いですが、認知症による思わぬ行動で乗り越えてしまう可能性も考慮しましょう。
同じ犬種でも、個体によってジャンプ力や運動能力、徘徊の激しさは異なります。
愛犬の普段の行動をよく観察し、その子に合った高さを選びましょう。
小型犬(~5kg程度)
- 目安の高さ: 30cm~45cm
- 理由: 小型犬はジャンプ力もそこまで高くないため、この程度の高さがあれば基本的に乗り越えるのは難しいでしょう。しかし、小型犬の中でも活発な子や、テーブルなどに登る癖のある子は、少し高めを選ぶと安心です。透明な壁面のプールであれば、圧迫感を与えにくくなります。
中型犬(~15kg程度)
- 目安の高さ: 45cm~60cm
- 理由: 中型犬になると、小型犬よりも高さが必要になります。特に柴犬などのジャンプ力がある犬種の場合、この範囲の上限に近い高さや、それ以上を検討することも重要です。この高さであれば、徘徊中に壁にぶつかっても乗り越えるリスクを低減できます。
大型犬(15kg以上)
- 目安の高さ: 60cm~以上
- 理由: 大型犬は体高も高く、行動範囲も広いため、最も高さが必要になります。特にゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなどの大型犬種は、60cm程度の高さは必要です。ただし、あまりに高すぎると、飼い主さんが愛犬の様子を見たり、介護をしたりする際に負担になることもあるため、バランスを考える必要があります。
中型犬や大型犬は円形に近い形のソフトサークルという選択肢も
高さが上がると、愛犬をプールから出し入れする際に飼い主さんの負担が大きくなる可能性があります。
特に大型犬の場合、抱き上げるのが難しいこともあるため、飼い主さんの身体的負担がとても大きくなる可能性もあります。
また、高さが60㎝程度あるビニールプールで市販されているものは、長方形かつ長さ180㎝以上と大型のものが多く、室内での設置に困ることも。
そんな場合は、ビニールプールにこだわらず、六角形や八角形のソフトサークルも、選択肢のひとつになりますね。
柴犬さんが、ソフトサークルを活用しているXの投稿がこちらです。
老柴先輩飼主様よりグル活サークルを頂きました。
— さちを (@higumayamacutie) June 23, 2024
これって…ハムスターのぐるぐる車犬版てこと…なのか…?
ほっとくと1時間でもグル活してるYO?フォームが安定してきたYO?
食欲旺盛だし。
このままでいくとガチムチクマデブボディ復活なのでは?更に長寿確定なのでは?#秘密結社老犬倶楽部 pic.twitter.com/PU9JVeLdmY
【壊れにくさで選ぶ】厚手ビニール素材で底面が滑りにくいものを
大切な愛犬が使うものですから、安全性と耐久性は非常に重要です。
厚手のビニール素材
愛犬の爪や歯で簡単に破れてしまわないよう、厚手のビニール素材でできたものを選びましょう。
製品情報に「耐久性強化」や「破れにくい」といった記載があるか確認すると安心です。
滑りにくい底面加工
プールの底面がツルツルしていると、愛犬が滑って転倒する危険があります。
ビニールの底面が滑りやすい場合は、敷物や滑り止めマットを敷いて対策をしている飼い主さんが多いようです。
【特に重要】床ずれ(褥瘡)のリスクを考慮した素材選び:
徘徊中に起き上がろうと手足をバタバタさせてしまう犬の場合、滑り止めマットだけだと摩擦力が強く、短時間で皮膚に傷や床ずれ(褥瘡)ができてしまうことがあります。
この場合は、底面に敷くマットは柔らかさを優先して選ぶか、キルティングのような布を敷くことで対策している飼い主さんが多いようです。
布地を敷く場合は四隅をしっかり固定し、たるまないようにすることが大切です。
【使いやすさで選ぶ】飼い主さんの負担を減らすポイント
日々の介護で少しでも負担が減るよう、飼い主さんの使い勝手も考慮しましょう。
空気の入れやすさ・抜きやすさ
手動ポンプで簡単に入れられるか、電動ポンプに対応しているかを確認しましょう。
空気抜きがスムーズに行えると、片付けも楽になります。空気入れ不要な自立型プールも選択肢の一つです。

持ち運びやすさ
軽いもの、空気を抜いたときにコンパクトに折りたためるものは、掃除の際や一時的に移動したいときに便利です。
排水栓の位置と大きさ
水を入れることはなくても、掃除の際に水で丸洗いすることを考えると、底に排水栓があると非常に便利です。
【プールの形で選ぶ】長方形・円形・だ円形の選び方
ビニールプールには主に円形、長方形、だ円形があります。
どれを選ぶかは、ビニールプールを置く場所の広さや愛犬の状態によって違います。
下の表は、円形、長方形、だ円形のビニールプールのそれぞれのメリット・デメリットをまとめたものです。
形状 | メリット | デメリット | こんな老犬におすすめ |
---|---|---|---|
円形 | ・角がなく、どこにぶつかっても柔らかい、最も安全性が高い ・方向転換がスムーズで、くるくる回る徘徊犬に最適 ・種類が豊富で選択肢が多い | ・部屋のデッドスペースができやすい ・大型犬には十分な広さの確保が難しい場合も | ・くるくる回る徘徊(旋回運動)が多い ・方向感覚が不安定で物にぶつかりやすい ・設置スペースにゆとりがある |
長方形 | ・部屋のレイアウトに合わせやすい(壁に沿わせやすい) ・大型犬でも広いスペースを確保しやすい ・直線的な徘徊ルートを作りやすい | ・角があるため衝突に注意(角にはまって動けなくなる可能性も) ・方向転換がしにくい場合も | ・まっすぐ歩く徘徊が多い ・部屋のスペースを最大限活用したい ・大型犬で広いスペースが必要 |
楕円形 | ・角がなく安全性が高い ・直線的な移動と回転の両方に対応 ・長方形よりデッドスペースが少ない | ・選択肢が少ない ・中途半端な特性に感じることも | ・円形と長方形の「良いとこ取り」をしたい ・徘徊パターンが複雑な子 |
【さらに快適に!】ビニールプール活用アイデアと、見守り続けるあなたへの注意点
せっかくビニールプールを用意するなら、愛犬がもっと快適に過ごせるように、そしてあなたの心が少しでも軽くなるような工夫をしてみましょう。
プールをもっと快適にするアイデア
底にはクッション材を
プールの底に、ペットシーツ、介護用マット、厚手の毛布などを敷くと、クッション性が増し、愛犬がより快適に過ごせます。
汚れてもすぐに交換できるので衛生的です。
毛布などを敷く場合は、たるみで転倒したり、足が絡まったりしないよう、四隅をしっかり固定しましょう。
お気に入りのおもちゃや寝床を設置
愛犬が普段使っているお気に入りのおもちゃや、落ち着ける寝床(タオルケットなど)をプールの中に置いてあげると、そこが「自分の安心できる場所」だと認識しやすくなります。
ただし、徘徊中に障害物とならないよう、可能な限り最小限に留めるようにしましょう。
丸いビニールプールに四角いベッドを置いたときに、ベッドとプールの壁の間のわずかな隙間に愛犬がハマってしまって動けなくなった、という例もあります。
愛犬が歩くときに障害になりそうなものや、ハマってしまうと危険なベッドはサークル内に置かないようにしましょう。
夏場の熱対策・冬場の冷え対策
ビニールプールの中は熱がこもりやすく、夏場は思いのほかプールの中の温度が高くなることがあります。
日当たりの良すぎる場所に置かないことや、時々飼い主さんが入って温度を確認してみるのが大事。
エアコンの風が直接当たる場所も避けた方が無難です。プールの中の気温が下がり過ぎてしまうことがありますよ。
見守り続けるあなたへの注意点
決して目を離さないで
ビニールプールはあくまで安全対策であり、完全に目を離せるわけではありません。
徘徊による事故のリスクは減らせますが、定期的に愛犬の様子を確認し、異変がないか注意深く見守りましょう。
排せつ対策
徘徊する老犬は、プール内で排泄してしまう可能性もあります。
底面に水洗いできる素材のマットを敷いておくと、粗相があっても拭き取るだけで済みますし、定期的に洗濯もできますね。
排せつのコントロールが難しくなっている子であれば、オムツの着用も視野に入れた方が安心です。
慣れるまでの工夫
最初はビニールプールの空間に戸惑い、入るのを嫌がる子もいるかもしれません。
おやつやおもちゃを使って誘導したり、飼い主さんも一緒にプールに入って安心させてあげたりと、焦らずゆっくり慣らしてあげることが大切です。
愛犬が不安を感じている時は、あなたの優しい声かけや撫でてあげることで、きっと安心してくれるはずです。
まとめ:安全な空間で、愛するあなたと愛犬の穏やかな毎日を
老犬の徘徊は、飼い主さんにとって本当に心配で、心身ともに疲れが溜まる原因となることもあります。でも、どうか一人で抱え込まず、できる対策を見つけていきましょう。
水を入れないビニールプールは、老犬の徘徊による怪我のリスクを減らし、安全を確保するための有効な選択肢です。
その柔らかい素材と手軽さ、そして介護負担の軽減というメリットは、きっとあなたの心を少しでも軽くしてくれるはずです。
今回ご紹介した選び方や活用アイデアを参考に、ぜひ愛犬にぴったりのビニールプールを見つけてくださいね!
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